一般社団法人 人工知能応用センター(AIAPセンター)
一般社団法人 人工知能応用センター(AIAPセンター)
Artificial Intelligence Application Center

ご挨拶

 当センターは、本年度、設立10周年という節目を迎えました。

この機会に、一般社団法人 人工知能応用センターのこれまでの10年間を振り返るとともに、これからのAIと社会について、私自身の考えをお伝えしたいと思います。

AIの大きな変化とともに歩んだ10年

 当センターが設立された2017年頃は、ディープラーニング(深層学習)をはじめとする技術の進歩によって、いわゆる「第3次AIブーム」が大きく広がっていた時期でした。

AIという言葉が社会に広く浸透する一方で、第2次AIブームの頃のように、「AIは何でもできる」「すぐに人間に代わる」といった期待だけが先行していたわけではありませんでした。むしろ、「AIを実際にどのように活用すればよいのか」という、より現実的な視点に関心が集まっていたように思います。

当時、注目されていたのは、AIという言葉そのものよりも、大量のデータをコンピュータで分析し、予測や判断に役立てる「機械学習(ML)」でした。

 当センターでは、こうした技術を一部の大企業だけのものにするのではなく、中小企業や比較的小規模な組織でも活用できる環境を広げたいと考えてきました。その取り組みの一つとして、米国H2O.ai社が提供するオープンソースのAI・機械学習プラットフォーム「H2O-3」の普及を支援してきました。当時は、優れた機能を持つ有料のAIツールも登場していました。しかし、中小企業がAIを導入するためには、できるだけ低コストで利用できる環境も必要です。

そこで当センターでは、オープンソースソフトウェアの活用や、AIを身近なものにするための情報提供・普及活動に取り組んできました。

日本初!!インスタントAI「H2O」Japanフェスタ

H2O-3の普及とコミュニティ活動

 H2O-3の普及活動として、セミナーの開催や、日本H2Oコミュニティの設立、Meetup活動などを行ってきました。

また、グランフロント大阪のナレッジ・イノベーション・アワードにおいても、AIの活用について発表する機会をいただきました。

その活動の集大成の一つとして、2020年3月6日、グランフロント大阪のナレッジシアターにおいて、約200人の来場者を想定したイベント「日本初!! インスタントAI『H2O』Japanフェスタ」の開催を予定していました。

しかし、その直前から新型コロナウイルス感染症が急速に拡大しました。

開催1週間前には、感染拡大防止の観点から行政機関からの助言もあり、苦渋の決断ではありましたが、イベントの開催を中止することとなりました。

当初は、感染状況が落ち着いた後に改めて開催することを考えていました。しかし、その後も長期間にわたって集会やイベントの開催が難しい状況が続き、最終的には開催を断念することとなりました。

大変残念な出来事ではありましたが、AIの普及活動に取り組んできた当センターにとって、忘れることのできない経験となりました。

機械学習(ML)から生成AIへ

 当時、当センターではH2O-3だけでなく、さまざまなAIツールについて調査を進めていました。

特に、人間の言葉をコンピュータで扱う「自然言語処理」の分野にも注目し、大規模言語モデル(LLM)を活用した技術について調査を始めていました。

その中で、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)などの技術が登場し、自然言語処理の世界は大きく進化していきました。

 そしてその後、OpenAI社がGPT-2、GPT-3を発表し、さらにChatGPTの登場によって、社会はこれまでにない規模で「生成AI」に注目するようになりました。

AIは、専門家や研究者だけが利用する技術ではなくなりました。

現在では、文章作成、情報整理、プログラミング、画像生成、データ分析など、さまざまな分野で多くの人々がAIを日常的に利用しています。

活動休止、そして新たなスタートへ

 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、当センターの活動も大きな影響を受けました。

先の見通しが立たない状況が続いたことから、センター活動を一時休止することとなり、会員の皆様にも退会というご判断をお願いすることとなりました。会員の皆様をはじめ、これまで当センターの活動を支えてくださった多くの方々には、改めて心より感謝申し上げます。

 活動を休止している間も、一部のメンバーとともにAI技術の発展を注視してきました。

しかし、その進歩のスピードは、私たちの想像をはるかに超えるものでした。新しい技術やサービスが次々と登場し、その変化についていくことだけでも精一杯という状況でした。

 今では、「AIなくして今後の社会や企業の発展を考えることは難しい」と言っても過言ではない時代になっています。ChatGPTをはじめとする生成AIが広く社会に普及した現在、当センターが設立当初から取り組んできた「AIを知ってもらう」「AIを身近なものにする」という啓発・普及活動については、一つの大きな役割を果たすことができたのではないかと考えています。


これからの人工知能応用センター

 これからは、単に汎用的なAIツールを紹介するだけでは十分ではありません。企業や組織が抱えている具体的な課題を明らかにし、その課題を解決するためにAIをどのように活用するかを考えることが、ますます重要になっています。

日本企業を取り巻く国際競争は激しさを増しています。

また、少子高齢化による人材不足も、多くの企業にとって深刻な経営課題となっています。

こうした状況の中で、AIを活用し、

    • 人材不足を補う
    • 業務の効率化を進める
    • 経営課題の解決につなげる
    • 新しいビジネスを創造する
    • AIを活用できる人材を育成する

といった具体的な成果につなげていくことが重要だと考えています。

当センターも、これまでの活動を踏まえ、新たな役割を考えながら、社会や企業の課題解決に貢献していきたいと思います。

AIは「人間の代わり」なのか

 最近は、「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉を以前ほど耳にしなくなりました。一般的には、AIが飛躍的に発展し、人間の知能を超える転換点を指す言葉として使われています。しかし、すでに現在でも、特定の分野ではAIが人間を上回る能力を発揮している場面が数多くあります。

 また、AIだけでなく、人型ロボットの進歩も目覚ましいものがあります。すでに一部の工場などでは、人型ロボットの実用化も始まっています。今後、AIとロボットは、電気やインターネットのように、社会を支える重要なインフラの一つになっていく可能性があります。

当センターを設立した10年前、これほど短期間にAIが社会へ広がり、ここまで大きな進化を遂げるとは、正直なところ想像していませんでした。

 そして特筆すべきことは、その進化のスピードが年々加速していることです。10年前に語られていた「第4次産業革命」は、まさに現実のものとなりつつあると感じています。その結果、私たちはこれまでの仕事の進め方や組織のあり方を、根本から見直す必要が出てきています。

働き方だけではありません。コミュニケーションの方法、組織の仕組み、人材育成、教育や学びのあり方についても、AIの存在を前提として考える必要があります。

これからの時代、人間は何を学ぶべきなのか。

そして、人間にしかできないこととは何なのか。

私たちは今、そのことを真剣に考える段階に来ているのではないでしょうか。

AIは人類の「相棒」へ

 AIは、もはや単なるコンピュータプログラムという存在ではなくなりつつあります。

これからは、人間の仕事や生活を支える「相棒」のような存在になっていくのかもしれません。AIを人間と比較して、「人間より優れている」「人間より劣っている」と議論することもあります。しかし、AIは人間ではありません。AIと人間は、そもそも異なる存在です。

人間は食事をし、睡眠をとり、生物として生命を維持しています。一方、AIは電力やコンピュータによって動いています。

今後、人型ロボットがさらに進化し、人間のように視覚、聴覚、触覚などを活用できるようになるでしょう。

また、将来、AIが「自己」や「自我」のようなものを持つ可能性についても、さまざまな議論が行われています。

しかし、仮にAIが自己や自我に相当するものを持つようになったとしても、それは人間と同じものとは限りません。

そもそも私たち自身も、人間の自己や自我がどのように形成されているのかを、完全に説明できているわけではありません。

だからこそ、AIを単純に「人間のコピー」と考えるのではなく、人間とは異なる存在として理解し、どのように協力していくかを考えることが重要だと思います。

これからの時代は、「人間かAIか」ではありません。

「人間+AI」で、どのような新しい価値を生み出していくのか。

そのことを考える時代になったのではないでしょうか。


次の10年に向けて

 一般社団法人 人工知能応用センターは、この10年間、多くの方々に支えられながら、AIの普及と活用に取り組んできました。

そしてこれからは、AIを単に知るだけでなく、実際の社会や企業の課題を解決するために、どのように活用していくかが重要になります。

AIと人間がそれぞれの特長を生かしながら、ともに発展していく。

当センターも、会員の皆様、そしてこれまでご支援いただいた皆様と切磋琢磨しながら、AIとの共存・共栄を目指し、人類とAIがともに発展できる社会づくりに貢献していきたいと考えています。

設立から10年。これまでの10年に感謝するとともに、新たな10年に向けて、一般社団法人 人工知能応用センターは、新しい一歩を踏み出してまいります。

今後とも、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。


     一般社団法人 人工知能応用センター


    理事長 石倉 一利
    中小企業診断士・ITコンサルタント